続きを読む ライフサイエンス業界の中心的役割がパンデミック、医療へのアクセス、基本的人権などの世界的課題への対処であることに鑑みると、持続可能性とレジリエンスは、ライフサイエンス業界における中核をなす業務課題です。ライフサイエンス業界における環境・社会・ガバナンス(ESG)の観点からの固有の要素は他の産業のものとは異なりますが、ライフサイエンス業界において新たに持続可能な価値を創造できるか否かは、会社がどのようにESGリスクに対処するかにかかっています。経営陣は、会社が潜在的リスクを回避し世界的にアップデートされ続ける規制を確実に遵守し、かつ、市場における地位と収益性を維持するために、ESGリスクを積極的に特定しその効率的な低減を確実に行わなければなりません。
私どもは、このセクターでの実績に基づき、次に掲げる持続可能性に関するテーマがライフサイエンス事業に影響を与え続ける中核をなすESG問題であると考えます。
利用拡大と入手可能性:満たされることのない医療ニーズに対処し、手頃な価格の必須医薬品の利用を拡大し、世界中の医療制度を強化することは、いずれも社会的かつ経済的進歩の基本です。2019年の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)により、これらの課題への取り組みにおけるライフサイエンス業界の更なる重要性が顕著になりました。このような背景から、国際的なライフサイエンス事業は、この問題への取り組みに際し、特に後発開発途上国の状況改善につき世界中で議論を行い、戦略の策定に取り組む必要があります。
サプライチェーンコンプライアンス:世界中の政府や規制当局の多くが、サプライチェーンコンプライアンスに関する厳格な規則を施いています。ライフサイエンス企業が事業運営のライセンスを保持するためには、アップデートされ続ける一連の国際的法規範を遵守しなければなりません。加えて、透明性の要件、国際的なサプライヤーに対する責任と義務が強化されています。このような規制強化の継続とこれに伴う訴訟提起の可能性の高まりは、世界のライフサイエンス業界に大きな影響を与えることになります。これは、サプライチェーンが長くかつ複雑になりがちなものであり、監視や制御が困難な数多くの内外の要因に影響されるためです。
製品の安全性と品質:不正な医薬品や規格外の医薬品により、毎年数十万人が死亡しています。医薬品の安全は、医薬品の偽造や転用から消費者を保護することと並んで、人々の健康を確保し、ライフサイエンス業界への信頼を維持するために不可欠です。したがって、企業は、製品の安全性確保と患者への安定した流通チャネルの維持に一層注力する必要があります。
企業倫理:製品の販売及び使用に向けたヘルスケア事業者と医療従事者の間で行われるやりとり、並びにロビー活動や啓発活動の透明性と倫理性に関して、規制当局や政策立案者、投資家を含む利害関係者の関心が高まっています。このような期待に企業がどのように応えるかは、そのレピュテーション、資本コスト、最終的には事業への許認可が得られるかどうかに直接影響します。
臨床試験の透明性と利用可能性:利害関係者は、臨床試験の透明性、及び学術交流や研究を目的とした試験データの広範な利用可能性への期待を高めており、治験被験者の安全とプライバシーに焦点が当てられています。事業者は、インフォームドコンセントに基づく意思決定と同意及び試験結果の利用を可能にするより効果的な情報共有を求めています。テクノロジーや、患者と医療従事者の協力的な関係が、より幅広い層の臨床試験への参加を実現することになります。
持続可能な調達、製品ライフサイクル、循環型経済:市場は製品ライフサイクルのより明確な可視性を求め、企業はネットゼロ(排出量実質ゼロ)の脱炭素化にコミットし、ビジネスモデルの革新は循環型経済の概念によって推進されています。ますます複雑化する国境を越えた規制を背景に、このような動向は、原材料の調達方法、製品の設計、製造、包装、販売、再利用、リサイクルの方法、廃棄物と有害物質の処理方法、並びに、排出物、プラスチック、水使用、生物多様性の喪失、労働条件及びコミュニティへの影響などの問題に関する広範な環境的・社会的影響の管理方法を変えつつあります。
ネットゼロの脱炭素化とプロセスの最適化:経済の脱炭素化に向けて、企業は、科学的根拠に基づく目標(Science Based Targets)にコミットし、エネルギー効率の向上と二酸化炭素排出量の削減、化石燃料への依存度の低下、再生可能エネルギーの利用拡大などに取り組んでいます。これらの取り組みにより、業務の効率化、医薬品の製造、包装、流通プロセスの最適化、業界全体のコスト削減が実現しています。
これらの問題がお客様のビジネスに与える影響についてご相談されたい場合、私どものESGリーダーまでお問い合わせください。