工業セクターに属する企業は、サステナビリティに向けた取り組みのどの段階にあるかによって、様々かつ複雑なサステナビリティ及びESGについての課題に直面しています。このセクターはこれまで技術変化に迅速に対応してきましたが、現在では、サステナビリティへの移行にあたり、ビジネスモデル、戦略、そして運営に影響を与えるより劇的な変化の試練を受けています。
製造業、自動車産業及び化学産業は、エネルギーや廃棄物管理、温室効果ガスの排出量削減、製品のライフサイクルにわたる設計・資源利用の効率化など、環境問題に重点的に取り組んできました。航空宇宙産業及び防衛産業の企業は、人権、腐敗防止、事業の健全性及び透明性へのコミットメントを示すなど、主に社会的問題及びガバナンス問題に取り組んでいます。
工業セクター全体にわたる主要なサステナビリティのテーマは、次のとおりです。
- 循環型経済に向けた取り組み:工業セクターの企業は、循環型経済の原則に従い、原材料の調達、エネルギーの使用及び廃棄物管理の再評価を行ってきました。廃棄物ゼロのサプライチェーンを目指しつつ、持続可能な調達と資材の再利用を増加させる製品設計及びライフサイクル管理の改善を行うことにより、収益、市場レバレッジ及び消費者からの支持を獲得している企業もあります。例えば、自動車産業は、オープンビジネスモデルやクローズドループ・バリューチェーンに対する消費者の需要に対応してきました。総排出量を削減するために使用済み資材の付加価値リサイクルを行っている自動車会社もあります。
- 低炭素経済に向けた取り組み:工業セクターは、ネットゼロ(排出量実質ゼロ)の未来への移行を推進するにあたっても、主導的役割を担っています。このセクターの環境全体への影響及びカーボンフットプリントは、事業運営に伴うエネルギーや資源の大量消費及び有害廃棄物の管理を勘案すると、依然として甚大です。エネルギーの効率化、廃棄物の削減及び再生可能エネルギー源の利用の増加などの経営効率化により、温室効果ガス排出量の削減は、ある程度達成されています。環境の持続可能性の原則に基づいて事業戦略とブランドを再構築した企業はあるものの、その他の企業にとっては、その製品、運営及び様々な障害によって、即時の移行が制限され、こういった動きがより困難であることがあります。移行の機会を見きわめることを重視しない企業は、規制措置、消費者の反感、投資家の撤退や訴訟のリスクに直面し、またそれらは[企業の]価値の喪失につながる可能性があります。
- 製品の品質及び安全性の向上:化学品事業を営む企業にとって、製品の品質と安全性に対する関心やマーケティング慣行、そして潜在的な反競争的行為に対する懸念を踏まえて、公衆の信頼に重点を置くために、顧客中心のアプローチが不可欠でした。また、製造産業や自動車産業においても、法規制の遵守基準を満たすだけでなく、製品の品質及び安全性を証明することへの消費者の期待の高まりに応える必要があります。
- 従業員の安全衛生の向上:労働内容の性質や、安全な工程と手続が徹底・遵守されていない場合において重大な安全に関わる事故が生ずるリスクに鑑みて、事業会社に対する従業員からの労働安全衛生確保の要求が高まっています。最も成功を収めている企業は、法律により要求されるレベルを超えて職場の安全衛生を確保する社内手続を積極的に整備しており、これにより、傷害に対する損害賠償請求や風評被害のリスクが生ずる可能性を最小限に抑えています。
- 危機防止に対する社内手続の策定:防衛産業の企業は、とりわけ、人権侵害の申立てその他の倫理問題に晒されています。しかし近年、多くの企業が、人権侵害、特に紛争地域における武器拡散への関与を防止する社内体制を確立していることから、このような論争は減少しています。その最たる成功例として、政府のライセンス制度により要求される最低ラインを超える人権デューデリジェンス・プロセスが挙げられます。
透明性及び報告の改善:工業セクター全体にわたり、炭素排出やエネルギーの使用など、強制的なサステナビリティや気候関連の報告・開示を義務付ける方向に変化しています。より広い意味では、事業の機微性及び腐敗リスクに対する脆弱性を勘案すると、透明性は、航空宇宙及び防衛セクターにおいては重要な問題です。このサブセクターにおいては、透明性及び健全性のための手段の向上を図り、腐敗防止のための積極的アプローチをとっている企業の割合が、まだ少ないながらも増加しています。
これらの問題がお客様のビジネスに与える影響についてご相談されたい場合、私どものESGリーダーまでお問い合わせください。